田口 淳一 著、あきらめないがん治療ネットワーク 監修『名医に聞く あきらめないがん治療』
がんの治療には手術、抗がん剤治療、放射線治療の3つがあります。
これらの治療法で改善が見られないと、多くの病院では治療法がなくなり、手詰まりとなってしまうことも。
しかし、これら3つ以外にもさまざまな治療法が存在します。当書籍は、治療をあきらめない患者さんのために各種治療法を紹介している1冊です。
ポイント
免疫療法(樹状細胞ワクチン療法)
第四のがん治療法として注目されているのが免疫療法。がん患者さん本人の免疫細胞を取り出して人工的に増やし、再度、体内に戻すことで免疫力を増強、がんと闘う力を強化する治療法です。
免疫療法の特長は三大療法との併用が可能であること、抗がん剤と異なり身体的な負担が少ないこと、更には本人のがんを覚えさせてから体内に戻すため、免疫細胞ががんを発見しやすくなり、再発予防や転移した際にも効果が期待できることが挙げられます。
小さながんをも狙い撃つ「IMRT」
「IMRT(強度変調放射線治療)」とは放射線療法の1つですが、従来のものとは全く異なり、画期的な技術です。これが登場してから劇的に治療に変化が起こりました。
IMRTは、がんの凹凸に応じて十分な放射線照射ができ、大きながんだけでなく、小さながんの放射線治療成績も向上。更に正常組織まで放射線で損傷してしまうリスクを回避できるようになったのです。
また、最新の「SBRT(体幹部定位放射線治療)」では狭い範囲に短時間で集中して照射できるようになり、従来に比べ、より身体への負担が少なくなりました。
腹水を抜く「KM-CART」
お腹に水が溜まる「腹水」という症状が出ることがあります。腹水が何リットルも溜まると、胃腸や腎臓を圧迫し、食欲不振や腎機能の低下を招きます。それだけでなく腹水には免疫に関わるグロブリンという物質や、アルブミンというタンパク質などを大量に含んでおり、腹水を抜くということは免疫機能を急激に落とすことになってしまいます。
そのため現代のがん治療では、抗がん剤治療などを中止し、打つ手がなくなってしまうのです。
この状況を変えたのが「KM-CART」治療法。患者さんから腹水を抜いてろ過し、がん細胞や細菌などの不要な成分は除去した上で、タンパク質などの必要な成分だけを再び体内に戻す治療法です。
当書籍で紹介されている要町病院腹水治療センターでは、余命数日と宣告された終末期の患者さんが、「KM-CART」治療法によって、元気になって職場に復帰されたり、もう一度抗がん剤治療にチャレンジできるようになったりするのも珍しくないといいます。
腹水を抱えた患者さんにとっては新たな選択肢となる治療法です。
【ヒトコト】
がん治療を「あきらめない」ことをコンセプトにした当書籍は、がん患者さんの治療の選択肢を増やす一助となります。治療の選択肢を増やしたいと考えている方は読んでみることをお勧めします。