2019年
済陽 高穂『副作用が楽になる、 抗ガン剤がよく効く食事』
2019年05月18日 [ 書籍 ]
当書籍の著者は、ガン食事療法として代表的なゲルソン療法や星野式ゲルソン療法などを研究し、独自のガン食事療法「済陽式食事療法」を創り出した医師。
この食事療法は手術や抗ガン剤療法、放射線療法と併せて実施することで治療効果を上げています。今回は食事療法による抗ガン剤の副作用軽減に絞って紹介します。
ポイント
なぜ抗ガン剤で副作用が出るのか?
抗ガン剤とは細胞に対する毒性を利用し、ガン細胞を倒す薬です。血液を通って全身に作用しますが、正常細胞とガン細胞を見分けることができません。そのため、正常細胞にも大きなダメージを与えます。これが副作用です。
とくにダメージを受けるのは粘膜の細胞。ダメージを受けると吐き気やおう吐、口内炎、下痢などの副作用が現れます。これらは抗ガン剤という毒物を排除しようとする自己防衛反応です。副作用の影響で食事が摂りづらくなると体力を奪われるため、対策が必要になります。
副作用を減らすポイント
著者によると、食事療法によってさまざまな抗ガン剤の副作用が軽減できるとのこと。今回は、その中から副作用で食事が摂りづらくなった場合に役立つ食事療法を3つ紹介します。
1つ目は味覚障害について。味が分からない、食べ物がおいしく感じられないなどの場合は、白身魚にレモンをかけてみたり、香辛料やハーブなどを使ったりすることを著者は勧めています。また、抹茶やごま、チーズなど亜鉛を含んだ食品を積極的に摂ることもポイントです。
2つ目は吐き気やおう吐について。おう吐してしまった場合、レモン水や冷たい番茶でうがいをすると口の中がサッパリします。また、おう吐した直後1~2時間は固形物を食べないことも大切です。
3つ目は口内炎について。抗ガン剤治療を受ける前には、口内炎予防のため歯磨きやうがいをし、口の中を清潔に保つこと。もし口内炎になってしまったら、水分を十分に摂ることが大切です。
他にも食事の献立で汁物を加えることや、食事にとろみをつけて飲み込みやすくする工夫も重要になります。また、酸味や香辛料、柑橘系、熱々の料理を避けるのもポイントです。
免疫力を高める生活習慣
当書籍では食事療法による副作用軽減と併せて、免疫力を高める生活習慣が紹介されています。
1つ目は睡眠について。免疫力を高めるには良質な睡眠が大切。夜間の睡眠は、副交感神経が優位になり、リンパ球を増やし、免疫力が高まります。そのため著者は9 時間を目安に取ることを勧めています。
2つ目は入浴について。入浴をすることで身体が温まり、血液とリンパの流れが改善、免疫細胞が働きやすくなります。
3つ目は笑いについて。笑うことで免疫力が高まります。また、笑顔でいようと前向きな気持ちになることも免疫力を高めるポイントです。
【ヒトコト】
当書籍では、済陽式食事療法で抗ガン剤の副作用を軽減した患者さんの実体験なども掲載されています。日常生活の中の工夫で行えることも多いので、副作用で苦しんでいる人にとっては読んでみる価値がある1冊です。
古川 健司『ケトン食ががんを消す』
2019年05月17日 [ 書籍 ]
当書籍の著者は、食事によるがん治療で著効な成果を上げている医師です。がんの唯一の栄養源は糖質(ブドウ糖)。これを摂取しないようにし、がんを弱らせる方法が「免疫栄養ケトン食(通称ケトン食)」です。
当書籍ではこの食事療法について分かりやすく解説しています。
ポイント
がんを弱らせるため糖質を断つ
がんの唯一の栄養源は糖質(ブドウ糖)で、甘いものの他に主食であるお米やパン、麺類などにも含まれています。
糖質は人体を動かすエネルギー源。人体は糖質を断った場合、正常細胞は緊急用のエネルギーを皮下脂肪から作り出すことができます。この糖質に代わる緊急用のエネルギー源が「ケトン体」という物質です。
人体はエネルギー源を糖質からケトン体に変更しても健康に問題はありません。しかし、がんは栄養源を断たれるため活動が弱まっていきます。
免疫栄養ケトン食
「免疫栄養ケトン食(通称ケトン食)」とは抗がん剤治療などのサポート療法として効果を発揮する食事
療法です。糖質を制限し、ケトン体をエネルギー源とした体質に変えることで、多くの末期がん患者さんの病状が改善されているとのこと。
ケトン食は体調を見ながら糖質カットの割合を徐々に増やしていき、最終的に糖質を95%までカット。加えて免疫力を活性化する栄養素としてタンパク質とEPAを積極的に摂取することでがんだけを弱らせ、正常細胞を元気にします。その結果、免疫力を高めて抗がん剤などの治療効果も上げるのです。
糖質95%カットとは糖質摂取量を1日20g以下にするということ。糖質の不足分を補うため、代わりにタンパク質と脂肪、食物繊維の摂取比率を上げます。また、食の楽しみを軽減させないよう、主食を他の食材に置き換えたり、レシピを豊富に揃えたりしていることも特長です。
当書籍では具体的な献立も多く紹介されていますので、参考にしてください。
ケトン食の効果をより高める方法
ケトン食の効果を高めるための方法は数多くありますが、その中から3つを紹介します。
1つ目は「身体を温める」ことです。がんは35℃で最も活性化するため、基礎体温を上げることが必要になります。
お勧めは内臓への血液循環を改善し、免疫力も高める「足湯」。またマイクロ波などで外部から患部だけを41~42.5℃に加熱し、がんを弱らせ、免疫力を高める「局所温熱療法(ハイパーサーミア)」も紹介しています。
2つ目は「睡眠の質を上げる」ことです。がん治療では体内ホルモンの強化・正常化が欠かせません。がん患者さんは遅くとも23時には就寝し、7時前後に起床するという習慣をつけておくことが大切です。睡眠の質を上げると強力な抗がん作用を発揮するホルモンが分泌されやすくなります。
最後に「食事」です。ケトン食に加え、免疫力を高めるためにβグルカンが豊富なキノコ類や、水溶性の食物繊維である昆布、わかめなど海藻類を摂ることを著者は勧めています。
【ヒトコト】
当書籍ではケトン食の臨床研究結果や患者さんが食べた実際の献立なども紹介されています。食事面からがん治療のサポートができるので、実際に行う価値はあると感じた1冊です。
星野 惠津夫『がん研有明病院で今起きている漢方によるがん治療の奇蹟』
2019年05月07日 [ 書籍 ]
当書籍の著者は、東京・がん研有明病院漢方サポート科でがん治療を担当している医師。漢方サポート科は、西洋医学によるがん治療が難しくなった患者さんの受け皿になっています。
当書籍では、漢方薬によるがん治療などを分かりやすく解説しているのが特徴です。
ポイント
漢方薬で治療効果が出る理由
多くの病院で行われている西洋医学のがん治療と、漢方薬によるがん治療の大きな違いの1つに薬の投与の仕方があります。西洋医学ではマニュアルによって、どのがんにどの薬を投与するかが決まっているのです。しかし投与された薬で効果が出ない場合も。
そのような場合、患者さんは治療を受けられなくなってしまうと著者はいいます。
それに対し漢方薬の治療では、1つ目の薬で効果が出なくても、効果が出る薬が見つかるまで修正を繰り返し、効果を出すのが特徴です。
漢方薬で患者さんが元気になる理由
抗がん剤はがんを直接攻撃するだけでなく周囲の細胞も攻撃するため、食欲不振や下痢の他、さまざまな副作用を発生させます。その結果、患者さんは気力や体力が低下し、元気がなくなっていくことに。
漢方薬による治療ではがんを直接攻撃しません。漢方薬の役割は免疫力の活性化や、消化器機能の回復によって食欲を増進させ、栄養状態を改善することなど。患者さん自身の力でがんを抑制するため、抗がん剤のように周囲の細胞へ悪影響を及ぼさないのです。
漢方薬は作用によって大きく「瀉剤(しゃざい)」「補剤(ほざい)」「和剤(わざい)」の3つに分けられます。がん治療で使用されるのはその中の「補剤」で、元気や気力を充実させたり、神経や免疫、内分泌の機能を回復させたりすることで患者さんの弱った心と身体を元気にするのです。
漢方薬の組み合わせ方法
漢方薬治療では患者さんの状態に合わせて補剤グループの漢方薬を何段階かに分けて投与します。
一例としては、まず補剤の中でも精神と自律神経を回復し、患者さんの元気を回復するものを投与。次に用いるのは血液の巡りを良くするもので、その次に用いられるのは呼吸器系の働きを良くしたり、体力を回復したりする働きがあるものです。
最後に3つの段階を経ても効果が出にくい場合は、冷えを改善し、身体を温めるものを投与します。
また、状態に応じて補剤とは別に血の巡りを改善する働きに特化した漢方薬や、患者さん自身の生命エネルギーを上げることに特化した漢方薬なども組み合わせることで治療効果を上げるのです。
【ヒトコト】
当書籍では漢方サポート科で治療を行ったがん患者さん20人の治療体験記と著者のコメントが載っています。これらを読むとがん治療で弱った身体が元気になり、生活の質(QOL)が向上していることが分かります。
患者さんが元気になりながら治療を行える漢方薬治療は、1つの選択肢として検討の余地がある治療法だと思います。
深作 秀春『視力を失わない生き方―日本の眼科医療は間違いだらけ』
2019年05月06日 [ 書籍 ]
今回紹介する書籍の著者は、アメリカ眼科学会で最高賞を最多の20回も受賞している眼科外科医。
著者が眼のトラブルを未然に防ぐため、眼に関する正しい知識を数多く解説している1冊です。
ポイント
眼はデリケートな臓器
眼は他の臓器と異なり、外部にむき出し状態のとてもデリケートな臓器です。
例えば花粉症やアトピーなどでしょっちゅう眼をこすっていると、プロボクサーのパンチに匹敵するほどのダメージを眼に与えてしまい、白内障や網膜剥離などの障害が起こる可能性があります。眼の健康を維持するためには、なるべくこすらないことが大切です。
また、強い紫外線の刺激によって白内障などになる可能性も。外で過ごすことが多い人は紫外線から保護するためにサングラスの着用を心掛けましょう。
コンタクトレンズの装着には十分な注意を
「酸素透過性」を強調し、長時間使用できることをうたい文句にしているコンタクトレンズがあります。
ところがその数値は工場出荷時点での値です。実際に使い続けるとタンパク質やカルシウム、汚れが付着し、酸素透過性は悪化。それにより、酸素が十分に黒目の角膜に行き渡らなくなります。
すると角膜の表面の「上皮」が傷むだけでなく、表面の細胞が死んでしまったり、細かい傷がたくさんできたりすることに。結果、眼がゴロゴロしたり、赤くなったりするのです。
このようなサインが出たら速やかにコンタクトレンズを外して眼鏡に代えましょう。
またコンタクトレンズの保存液にも問題が。コンタクトレンズは保存液に浸すことでタンパク質の除去や殺菌ができ、清潔になるとうたわれています。
この通りであれば、保存液に浸したコンタクトレンズを眼に装着すると、眼の細胞が死んでしまうことに。浸けた後に装着しても大丈夫なのは保存液にそれほどの効果がないためです。
水道水で保存液の代用をする人もいますが、水道水は完全に無菌ではありません。水道水を使うと雑菌で角膜炎になり、視力に影響が出ることもありますので注意が必要です。
著者は、酸素透過性や保存液の問題からコンタクトレンズの使用は原則1日8時間以内。それ以降は眼鏡の使用を推奨しています。
白内障手術は病院選びから
大学病院での白内障手術は安心と思われがちですが、著者によるとそれは事実ではないとのこと。とくに多焦点レンズを使用した手術では、術者の腕により結果がまったく異なります。
大学病院はあくまで医師を育成する「研修病院」ですので、手術経験がほとんどない研修医が手術をすることも。
そのため多焦点レンズを移植しても視力が0.2程度しか出ないという患者さんが多く発生しています。
手術をする場合は、多焦点レンズ移植を数千例以上経験していることや、術後に良い視力を出していることなど技量の優れている病院や医師に依頼することを著者は勧めています。
【ヒトコト】
眼の健康を守るための知識は意外に知られておりません。
また、著者によると眼の水晶体の寿命は65~70年。そのためシニアになれば誰もが白内障になるとのことです。
医師の技量によって視力の回復度が異なるとのことですので、いざというときに備えて今から信頼できる医師や病院探しを始めてみてはいかがでしょうか?
谷川 啓司『がんを告知されたら読む本 ―専門医が、がん患者にこれだけは言っておきたい"がん" の話』
2019年05月05日 [ 書籍 ]
当書籍は、がん専門医が患者さんに向けてがんの基礎知識を分かりやすく解説した1冊です。
がん患者さんが治療のとき「がん」とは何かを知ることで、納得度の高い治療が受けやすくなることを目的としています。
ポイント
がんとはどのようなものか?
がんは正常な細胞にはない2つの特殊な性質を持っています。
1つは細胞が死ぬよりも生まれる速度の方が速いため増え続けていくこと。もう1つは他の臓器に移っても生きられることです。
がんの怖いところはがんそのものではなく、重要臓器で増殖し、臓器の働きを阻害して多臓器不全になること。逆に進行しなければ怖くありません。そのため肺は半分、肝臓では1/3の機能が働いていれば生き続けることができます。
がん治療の目的の1つはがんの進行を遅らせること。これによって治療の選択肢を増やす時間の余裕が持てるのです。
がんと免疫
私たちの身体ががんになりにくいのは免疫機能が働いているためです。
免疫機能はがん細胞を含む初めての異物と戦った後、その異物の弱点などを学習。次に戦うとき、その異物を効率的に排除します。それでもがんになってしまうのは大きく3つの原因が。
1つ目はがん細胞が正常細胞と似ており、免疫機能がすぐに攻撃できないため。
2つ目は免疫機能ががん細胞を退治する速度よりもがん細胞が増殖する速度の方が速いため。
3つ目はがん細胞の中には免疫機能に働きかけ攻撃を抑える仕組みがあるためです。
がん治療の主役は標準治療(手術、抗がん剤、放射線)ではなく免疫機能です。抗がん剤の役割はがん細胞を殺すのではなく、がん細胞の増殖を抑えること。治療効果を上げるため、常に免疫機能を高めておくことが重要です。
免疫機能を上げるために
当書籍では代替医療の1つで、免疫機能を上げる「免疫療法」という治療法が紹介されています。
免疫療法は副作用がほとんどなく、標準療法と併用して行える反面、保険適用外で治療費が高額なことや、劇的な効果があるわけではないなどの注意点も。しかし免疫機能を上げ始める時期が早ければ早いほど、その恩恵を受けやすくなるのも事実です。
免疫療法の1つ目は「活性化リンパ球療法」。リンパ球という免疫細胞に体外から刺激を与えて、強制的にリンパ球を活性化させる治療法です。
2つ目は「樹状細胞ワクチン療法」。体外で、免疫機能の司令塔である樹状細胞にがん細胞の特徴を覚え込ませて、体内に戻します。体内に戻された樹状細胞がリンパ球に命令し、がん細胞を攻撃させる治療法です。
3つ目は「温熱療法」。身体を温めることで活性化した免疫機能にがん細胞を攻撃させる治療法です。
他には心理的ストレスを軽減することでも免疫機能は上がります。
【ヒトコト】
当書籍では、ご紹介した内容以外にもがん治療について一通り分かりやすく解説されています。
がんを知ることでより良い治療を受けることができますので、ご一読をお勧めいたします。
今渕 恵子、保坂 隆 『がんでも長生き 心のメソッド』
2019年05月04日 [ 書籍 ]
当書籍は、ステージ4の炎症性乳がんを患い、肝臓や多数のリンパ節にも転移したコピーライターの今渕恵子さんと、聖路加国際病院・精神腫瘍科の保坂隆医師の対談集です。当書籍は心の状態がいかにがん治療に影響を及ぼすかが分かりやすく書かれています。
ポイント
うつ病とがんの関係
がん患者さんの30~40% がうつ病の手前の適応障害を、20% がうつ病を併発しているというデータがあります。がん患者さんがうつ病を併発すると免疫力が低下。
そのためうつ病を併発したがん患者さんは、併発していない患者さんよりも早く亡くなったり、転移や再発の確率が高まったりすることも分かってきています。
闘病中に気持ちが沈む、何もしたくなくなるなど、少しでも兆候を感じたらがん専門の精神科である精神腫瘍科や、全国400カ所以上ある「がん診療連携拠点病院」内の相談室などで相談することが、がん治療のために大切です。
うつ病から脱する方法
がん患者さんは抗がん剤治療を行っていることが多く、投薬によるうつ病治療が難しい場合も。
そのため保坂医師は投薬以外の治療方法を紹介しています。
1つ目は認知療法。うつ病の原因となっている心の問題をカウンセリングや客観的なデータの提示などによって解消していく治療法です。
2つ目は運動療法。運動には気分を安定させる神経伝達物質セロトニンの代謝を活性化する働きがあり、抗うつ剤と同じような効果があります。運動は週3 回、3カ月以上続けることがポイントです。
3つ目は脳が一度に1 つのことしか集中できない性質を活用した治療法。
具体的には編み物や料理、ガーデニング、アイロンかけ、窓ふき、タイル磨きなどを一心不乱に行うこと。これらを行うことで不安や落ち込みから解放されるだけでなく、達成感も出て、気持ちが上がってくるのです。
うつ病から脱することで、うつ病による免疫力低下も防ぐことが出来ます。
免疫力を回復させる方法
がん闘病中、うつ病以外でもさまざまな心理状態によって免疫力が低下します。ストレスで自律神経の交感神経が優位になることもその中の1つです。
原因は検査などで神経が高ぶったり、抗がん剤治療の副作用で一時的に不眠症になったりすること。
このようなケースではストレスを解消して副交感神経を優位にし、免疫力を回復させることが大切です。
保坂医師が勧めているのは「腹式呼吸」、「筋弛緩法」、「自律訓練法」、「イメージ療法」の4つのリラクセーション法。
これらを実践し、リラックス状態を自分で作り出せるようになると免疫力を回復させる効果をもたらします。
※それぞれのリラクセーション法の具体的やり方については、インターネット上で数多く紹介されていますので、そちらをご参照ください。
【ヒトコト】
今渕さんは保坂医師に相談したことでだんだんと心が元気になり、今でもご活躍中です。
今渕さんに限らず心を元気にすることはがん治療で大きなプラスになります。闘病時、不安などを抱えた心を元気づけるときの参考になりますので一読をお勧めいたします。
高山 知朗『治るという前提でがんになった―情報戦でがんに克つ』
2019年05月03日 [ 書籍 ]
当書籍の著者は40歳で脳腫瘍を、42歳で悪性リンパ腫を発症しながらも、三大療法(手術、抗がん剤、放射線)だけで二度のがんに克ちました。
当書籍では著者が闘病の間、どのようなことを行ったのかを具体的に解説しています。
ポイント
治療前には人生の目標を設定する
手術や抗がん剤などで治療を行う際に大切なのは「人生の目標」を設定することです。それに基づいて医師は生活の質(QOL) を優先した治療にするか、後遺症などが残ってもより永く生きるための治療にするかを決めていきます。
著者の場合、脳腫瘍発症時に1歳のお子さんがおり、お子さんが20歳の誕生日を迎えるまで、どんなことをしても生きていたいとの目標を設定。それに基づいて医師はより多くのがん細胞を取りきる手術を実施。結果、視野の一部が見えなくなる後遺症が残りましたが、脳腫瘍に克ちました。
しかし2年後には悪性リンパ腫を発症。約2年間の闘病生活でもこの目標がつらい抗がん剤治療を耐える原動力になりました。
病院選びについて
病院選びはがんに克つためにとても重要です。その理由は病院によって生存率などが変わってくるため。
脳腫瘍のような固形のがんと、悪性リンパ腫のような血液のがんでは病院選びが異なってきます。
固形のがんの場合は各病院での治療成績、つまり「5年生存率」が病院選びの大きな指標に。
病院によってはHP上で先進的な設備や治療方法の概要をはじめ、グレードごとの症例数、生存率、腫瘍摘出率などの詳細なデータまで公表していますので、選ぶ際の重要な判断材料になります。
血液のがんの場合、学会で標準とされるレジメン(抗がん剤の種類や量、期間、手順などを時系列で示した計画書) を採用していれば、どこの病院で治療を受けても基本的には治療成績に差が出ません。しかし、抗がん剤の副作用に対する対応で病院の差が出てきます。
副作用が出た場合、いかに適切に、かつ速やかに対処できるかがポイント。そのため今まで治療してきた患者数が病院選びの参考になります。
情報収集で克つ
闘病で大切なのは主体的な患者になることです。「病気のことはよく分からないので先生にお任せします」というスタンスではつらい闘病に耐えられないことも。
著者の場合、がんに克つため書籍やインターネット、海外論文などから情報収集を実施。中でも主に活用したのがインターネット。著者は真偽入り混じるネットの情報の中で信頼できるサイトとして「がん情報サービス」(http://ganjoho.jp/)と「がんサポート」(https://gansupport.jp/)を挙げています。
加えて最新の治療方法に関しては海外の学術論文を検索。専門用語などを調べながら論文を読み込んで、分からないことは担当医に質問し、最善の治療方法を見いだしていきました。
【ヒトコト】
当書籍は他にも闘病生活で起こる様々な問題についての具体的な対策やノウハウが詰め込まれています。例えば、闘病生活で直面する治療費や部屋の選び方(大部屋か個室か)、病院食を受け付けなくなった時の対処法など。
闘病時の参考になりますので一読をお勧めいたします。
佐藤 純『天気痛―つらい痛み・不安の原因と治療方法』
2019年05月02日 [ 書籍 ]
当書籍のテーマは「天気痛」。天気の変化で片頭痛や腰痛、頸椎症などの痛みが発生する病気のことです。
医師であり、天気痛研究の第一人者でもある著者が天気痛の発生原因やその対策法を解説しています。
ポイント
天気痛とは何か?
天気痛とは、天気(とくに気圧)の変化でめまいや片頭痛、腰痛、頸椎症などの痛みが発生する病気です。天気痛は、片頭痛や頸椎症、肩こり、変形性関節症、腰痛症、関節リウマチなどの慢性痛を持ち、耳の内側にある内耳が敏感な人が発症します。
痛みの発生メカニズムは「天気の変化を内耳が感じる→変化がストレスとなり自律神経の交感神経に作用する→痛みが生じる」というもの。著者によると日本の推定患者数は1000万人以上とのことです。
痛みの発生ルートは2つ
天気痛には痛みの発生ルートが2つあります。1つは「ストレスにより自律神経の交感神経が優位→血管が収縮→血行不良→慢性痛発生」というもの。これは天気痛以外の人が慢性痛を発生させるルートでもあり、一般的なものです。
しかし、このルートの対処だけでは痛みが治まらないことがあります。その理由は、天気痛の人だけに出現する「交感神経が痛みの神経に直接作用→慢性痛発生」というルートがもう1つ存在するからです。
天気痛の痛みを緩和したり、改善したりするには、これら2つのルートから痛みが発生するということを理解することが対策の第一歩。その上で、天気痛へ適切に対処し、予防、治療していくことがポイントとなります。
天気痛の予防と治療法
天気痛は次の3段構えの治療が必要です。
第1段階目は自分の痛みが天気に左右されていることを知った上で、天気の変化を感じたら急性の痛みが出ないようにすること。著者は天気の微妙な変化を感じたら、内耳に効果のある抗めまい薬と、五苓散(ごれいさん)や柴苓湯(さいれいとう)などの漢方薬で急な痛みの発生を防ぐことを1つのパターンとして採用しています。
ただしこれだけでは天気痛の根本的な解決にはなりません。
そこで第2段階目として痛みをコントロールする方法を身につけることが必要になってきます。それは天気痛を起こす原因となっている乱れた自律神経を整えること。
具体的には朝食を食べることや運動すること、入浴し汗をたっぷりかくこと、毎日の寝る時間と起きる時間を同じにして質の良い睡眠を取ることなどが大切です。また天気痛になる人は冷え症の人が多いので、身体を温め、冷え症を改善することも自律神経を整えるポイントになります。
第3段階目は天気痛の根本原因である慢性痛を治すこと。慢性痛の治療として有効なものはストレッチや筋トレ、鍼灸(しんきゅう)、ツボ刺激、マッサージなど。当書籍では天気痛改善ストレッチやツボ刺激などが図説で掲載されていますので参考にしてください。
この3段階を焦らず時間をかけながら行っていくことが天気痛の緩和や解消に繋がっていきます。
【ヒトコト】
天気の変化で痛みが発生する天気痛は当人しか痛みが分かりません。
痛みのメカニズムを理解することで適切な対処が出来、痛みの解消にも繋がります。天気の変化で痛みが出てしまう人は一読をお勧めいたします。
N H K スペシャル取材班『キラーストレス―心と体をどう守るか』
2019年05月01日 [ 書籍 ]
当書籍では、健康に悪影響を及ぼす慢性ストレスを「キラーストレス」と命名。
そのメカニズムを明らかにするとともに、キラーストレスから健康を守る対処法を解説した1冊です。
ポイント
キラーストレスは健康を害す
人間はいいことでも悪いことでも何か「変化」が起こるとストレスを感じます。ストレスを感じると脳から指令を受けたコルチゾールやアドレナリンなどのストレスホルモンが各臓器に指令を伝達。心臓の鼓動が早くなったり、血圧が急激に上昇したりするストレス反応が起こります。
これが慢性的になると「キラーストレス」となり、ストレスホルモンは分泌され続けることに。
すると脳内にストレスホルモンが溢れ出し、脳の神経細胞を壊したり、体内で出血したり、免疫細胞がガンの攻撃を止めてしまう遺伝子のスイッチを入れたりします。結果、心身のさまざまな疾患を発症させ、最悪、死に至ることも明らかになってきました。
キラーストレスを増幅させる「マインド・ワンダリング(心の迷走)」
キラーストレスをさらに増幅させてしまうのが「記憶力」や「想像力」。脳はストレスを感じると「また同じようなことが起こるかもしれない」と思い、そのたびにストレスを増幅させてしまうクセを持っています。このような状態が「マインド・ワンダリング( 心の迷走)」。
ハーバード大学の調査によると、起きている時間の47%がマインド・ワンダリングで、ストレスを感じやすい状態に置かれているとのことです。
キラーストレスから健康を守る「コーピング」と「マインドフルネス」
当書籍では効果的なストレス対処法として「コーピング」と「マインドフルネス」という手法を紹介しています。
コーピングとはストレスコントロールの手法です。まずストレスを感じたときにどんな気晴らしをすれば気分が良くなるか、「音楽を聴く」や「本を読む」、「コーヒーを飲む」など100個を目標にリストアップ。
ストレスを感じるたびに、その気晴らしリストから実際に実行していきます。ストレスの度合いに応じ項目を変えて対処していくのがポイントです。
マインドフルネスとは瞑想の一種。記憶力や想像力によりストレスを増幅させるマインド・ワンダリングを回避したり、脱したりするための手法です。
マインドフルネスを行うことによって、「はっと我に返った状態」「今の現実に注意が向いた状態」となり、マインド・ワンダリングが止まるのです。世界各地で研究が行われ、ストレスの減少が報告されています。
※詳しいマインドフルネス(瞑想)のやり方は当書籍以外にもインターネット上で数多く紹介されていますので、そちらもご参照ください。
【ヒトコト】
キラーストレスによって健康が損なわれることを明らかにしている当書籍。ストレス自体をなくすことは難しいですが、和らげることや増幅させないようにすることは出来そうです。
キラーストレスから健康を守るためにも読んでみてはいかがでしょうか?
野中 秀訓 著、斎藤 糧三 監修『がんになって、止めたこと、やったこと』
2019年04月30日 [ 書籍 ]
当書籍の著者は、大腸がんステージ4から生還しました。そのポイントは徹底的に生活習慣を見直したこと。
著者の「身体に良くないと考えられることをすべて止めて、身体に良いと考えられることは出来るだけやる」という考えの下、当書籍ではがんになった生活習慣を振り返り、がんに克つために採った生活習慣を7つにまとめて解説しています。
ポイント
がんになった7つの習慣
著者はがんと診断された後、自分の生活を振り返って、がんになってしまった7つの生活習慣を挙げています。それはストレス過多、暴飲暴食、食に無頓着、過度な運動で身体を酷使、休みのない生活、自律神経の乱れ、身体が冷え始めるなどがんになる予兆の見逃しの7つです。
とくに悪い習慣として挙げていたのがストレスと食生活。経営者である著者は、ほとんど休みを取らず、短時間の睡眠が続くなど、身体を労わらないストレスフルな生活を続けていました。
また、食生活ではラーメン・チャーハンセットなどの「糖質過多」が日常食に。
糖質はがん細胞にとっての唯一のエネルギー源。著者はストレスで免疫力が弱った上に、がん細胞を増やす食生活を続けていたのが原因と考えています。
がんを治すために改善した7つの習慣
著者がステージ4の大腸がんを治すために採った7つの習慣とは、「がんになる7つの習慣」の反対の行動です。
具体的には食事改善、早寝の習慣化、解毒(デドックス)をして毒素を排泄する、漢方薬&生薬を上手に活用すること、ヨガ&鍼&マッサージを行って身体を労わること、ストレスをため込まない考え方に変えるとともに生への執着を強く持つこと、生活環境の見直しの7つです。
著者は抗がん剤治療を3クール目で止めました。その上で代替療法(食事療法、サプリメント・漢方薬・生薬の活用、高濃度ビタミンC点滴など)を採り入れながら、日常生活では食事の改善でがん細胞を増やす糖質を出来る限り排除。魚や野菜など栄養価の高い食事で体力をつけると共に、身体を温めて自己の免疫力を上げるようにしていったのです。
代替療法を受ける際の注意点
標準治療(手術、抗がん剤治療、放射線治療)以外に代替療法を受ける際のポイントはCTやPET-CTなどの設備がある病院とのつながりを維持しておくこと。
一般的に標準治療を行う病院にはそれらの設備がありますが、代替療法に力を入れているクリニックでは設備がないところがほとんどなので代替療法の効果についての経過検査を行えません。経過検査を受けられる施設とつながりを持つことは、代替療法を選んだ際にはとても大切です。
代替療法を行う際には、診断を受けた医療施設で経過検査が受けられるかどうかを確認するようにしましょう。
【ヒトコト】
がんに克った著者は医師任せにせず、自分でも積極的に情報を集め、自分のニーズに近い治療を行う医師を探して治療を行いました。
当書籍にはがんに克つために行った著者のさまざまな情報が詳しく解説されています。闘病のヒントとなる情報があると思いますので、一読してみてはいかがでしょうか。
山本 朋史『ボケてたまるか!―62 歳記者認知症早期治療実体験ルポ』
2019年04月29日 [ 書籍 ]
認知症の前段階である「軽度認知障害(MCI)」と診断された『週刊朝日』記者の著者。
当書籍の内容は、薬に頼らず、認知障害の早期治療である「認知力アップトレーニング」をしながら、その状況を詳しく報告したものです。
「軽度認知障害」は薬に頼らずとも、症状改善の可能性が高いことを知ることが出来ます。
ポイント
認知症になる要因は?
著者が「軽度認知障害」と診断された原因として思い当たったのが、5年以上に渡る睡眠導入剤の服用。その旨を『週刊朝日』に掲載後、読者からも「認知症にとって睡眠薬や睡眠導入剤は重大な危険因子という記事が、欧米で次々と発表されている」との指摘があり、断薬することに。
睡眠薬による認知症リスクについては、断薬専門の内科医である内海聡氏の著書『睡眠薬中毒』でも解説されています。
本当の不眠症(48~72時間、まったく一睡も出来ない状態)以外では、安易に睡眠薬や睡眠導入剤を飲むのは控えた方がよさそうです。
違和感を覚えたらすぐに検査を
著者は認知力に違和感を覚え、すぐに病院へ。結果、「軽度認知障害」との診断を受けました。
著者のように初期段階で受診する人は少数。多くの人は違和感を覚えても検査をせず放置し、症状が進行した状態になって受診します。
そのため手遅れになってしまっているのが現状。症状を進行させないためには「約束したけれど約束したこと自体、記憶にない」など違和感を覚えたら、すぐに病院の検査を受けること。
認知症の前段階である「軽度認知障害」であれば、症状の改善や進行を遅らせることが出来ます。
軽度認知障害を改善する認知力アップトレーニング
認知力アップや、認知症予防のために必要なことは、集中力と敏捷性、そして同時にいくつもの作業を行って脳に刺激を与え続けることです。
著者は筑波大学附属病院内のデイケアの1つ「認知力アップケア」を受講。
ここでは柔軟体操やステップダンス、スケッチ、料理など多種多様なカリキュラムが実施され、認知機能の回復を行っています。
これらを日常生活でも繰り返し行うことで認知力アップにつながり、認知障害の進行が緩やかになったり、症状の改善が見られたりする人も多くいるそうです。
著者がとくに実感を得たのは筋力トレーニング。実は多くの認知症患者は、筋肉痛や外傷などの痛みをあまり感じないといいます。
それは身体の感覚神経が脳につながっていないということ。認知症患者が遠くまで徘徊するのも、足の疲れや痛みが脳まで届きにくくなっているため。
著者は下半身を中心に筋トレを行った結果、筋肉痛を感じにくかった感覚神経が復活。疲れや痛みを感じるまでになり、認知機能がアップした手ごたえを得たとのことです。
トレーニングにはさまざまな種類があるため、具体的な方法は各病院の「もの忘れ外来」で相談してみましょう。
【ヒトコト】
認知症は誰もが発症する可能性がある病気です。初期段階で検査を受ければ、治療の選択肢が多くあります。認知症になると介護も大変に。
違和感を覚えたら早目に「もの忘れ外来」などで診察を受けるようにしてみてはいかがでしょうか?
塩田 清二 著『< 香り> はなぜ脳に効くのか―アロマセラピーと先端医療』
2019年04月28日 [ 書籍 ]
アロマセラピーをご存じでしょうか?香りを嗅ぐことで心身にいい影響を与え、健康管理に役立つものです。
日本ではまだ趣味のイメージが強いのですが、フランスやベルギーでは長年、医療行為として認められています。
当書籍では医学部教授である著者が、アロマセラピーによる病気の緩和や改善などを解説しています。
ポイント
アロマセラピーの特長
当書籍によるとアロマセラピーとは「精油を薬剤として用いた医療」のこと。使用される精油とは植物の芳香成分を抽出したものです。
アロマセラピーの大きな特長は、香りが痛みや不快さなどを感じる脳内の視床下部や大脳辺縁系と呼ばれる部分に直接作用すること。それにより脳内にある自律神経やホルモンを分泌する内分泌系、感情などにいい影響を与えることが明らかとなってきているのです。
加えて薬などに比べ量は微量であり、身体への副作用が少ないことも特長の1 つとして挙げられます。
アロマセラピーの吸収経路は2つ
アロマセラピーには2つの吸収経路があります。1つは鼻から吸収し、直接、脳に働きかける「経鼻吸収」。
もう1つは皮膚から吸収し、血液によって体内を巡る「経皮吸収」です。
同じ精油であっても経鼻吸収と経皮吸収では、中枢神経に及ぼす作用が異なることも。
例えば「サンダルウッド(白檀)」の精油の主成分である「α-サンタロール」は、経鼻吸収では興奮作用、経皮吸収では鎮静作用と異なっているのです。
アロマセラピーの効果
アロマセラピーはさまざまな症状に対して効果が認められており、当書籍でも多くの事例が載っています。
例えばガンには「不安感やうつ症状などの精神的改善」、「ガン性疼痛など身体的症状の改善」、「抗ガン剤や放射線治療の副作用の軽減」の効果があるとのこと。
当書籍では抗ガン作用が期待される精油成分としてゼラニウムやローズ、パルマローザなどの精油に多く含まれる「ゲラニオール」を挙げています。
フランスの実験では抗ガン剤「フルオロウラシル(5-FU)」単体よりもゲラニオールを併用した方が抗ガン作用を促進し、ゲラニオールが高濃度だとその作用がより高まるとの報告があります。
また、高血圧ではラベンダーやイランイラン、ベルガモットのブレンドを4週間吸入することで、血圧と脈拍の有意な低下が認められていたり、1週間に1回、計8回、ラベンダー、ローズゼラニウム、ローズ、ジャスミンの精油をブレンドしたアロマオイルでトリートメントすると上と下の血圧がともに下がったりという報告も。
当書籍では他の生活習慣病や痛み、精神的な病気に関しても一定の効果が得られていることを報告しています。
【ヒトコト】
アロマセラピーというと一般的に香りを楽しむイメージがありますが、実はさまざまな病気への具体的効果が数多く報告されています。
今までとは異なったアプローチで、さまざまな治療の一助となる可能性を知ることができる1冊です。
※治療目的で使用する場合は専門家の指導のもとに実施してください。
内海 聡『睡眠薬中毒』
2019年04月27日 [ 書籍 ]
多くの日本人が不眠症の悩みを抱えており、病院では睡眠薬が処方されます。
睡眠薬によって最初はよく眠れるようになりますが、その後、知らず知らずのうちに睡眠薬なしでは眠れないようになっていることも。
当書籍では断薬を主としたクリニックの院長である著者が、睡眠薬を飲み続けることで、どのような問題があるのかを解説しています。
ポイント
睡眠薬は向精神薬の一種
著者曰く、実は睡眠薬や睡眠導入剤は向精神薬の一種で、これらには不眠を治す力はなく、強制的に脳へ麻酔をし、沈静化させているだけとのこと。
睡眠薬には依存性や禁断症状があるだけでなく、海外では麻薬と同様に規制されていたり、飲み続けることで認知症になりやすくなったりする性質があります。
著者は世界五大医学誌の1つ『ランセット』に掲載された論文を基に、睡眠薬が大麻やLSDといった麻薬よりも依存性が高いことを明らかにしています。
睡眠薬を飲み続けるリスク
睡眠薬は飲み続けているうちに耐性が出来て効かなくなるため、量や種類が増えていきます。そして睡眠薬の成分は体内だけでなく、脳にも蓄積されていくのです。
そのため、副作用によって飲めば飲むほど不安や緊張が増し、ますます睡眠薬に依存するようになることも。
また脳を委縮させることで、記憶が飛んだり、認知症のような症状が出やすくなったりします。
加えて神経系にも作用するため、運動機能に障害を起こしたり、パーキンソン症候群やギラン・バレー症候群などの病気も引き起こしたりするのです。
不眠傾向でも睡眠薬を飲まないようにするために
不眠の最大の原因はストレスですので、ストレスの元を解決することが先決。
また、眠れる身体作りのための食事は和食、それも『まごはやさしい(まめ・ごま・わかめ・やさい・さかな・しいたけ・いも)』に加え、良質の卵料理も一緒に意識して取り入れることです。
そして糖質制限食で砂糖は絶対に摂らないようにし、穀物類も出来るだけ取らないようにすることを著者は勧めています。
また、睡眠薬を常用することが多い年配の人で、不眠の傾向がみられるのは「昼間、身体を動かしておらず、まったく疲れていない」場合。加齢とともにホルモンの分泌量は減り、睡眠ホルモンであるメラトニンの分泌量も減るため、睡眠時間は若い頃よりも短くなっているのです。
眠りやすくなるポイントは日中にしっかりと身体を動かして疲れること。
若い頃と同じように「7時間眠らなければいけない」「朝まで眠らなければいけない」と考えるのは間違いで、睡眠時間が短かかったり、早朝に起きてしまったりしても、気にしないことが大切です。
【ヒトコト】
著者によると本来の不眠とは48時間(丸2日間)や72時間(丸3日間)、まったく一睡もできない状態のことであり、眠りが浅い、眠りにくい、睡眠時間が短いなどの症状は不眠ではないとのことです。
睡眠薬を飲み続けることのリスクを踏まえ、本当の不眠以外は出来るだけ使用を控えてみてはいかがでしょうか?
樋野 興夫『がん哲学外来へようこそ』
2019年04月26日 [ 書籍 ]
がんになると患者さん本人や家族も怖さや不安など大きな悩みを抱えます。しかし、それらを解消する場所がなかなかありません。
「がん哲学外来」は、そのような悩みを解消するために設けられました。
著者は順天堂大学医学部教授であり、がん哲学外来の創設者。当書籍は、がん患者さんたちの悩みを解消する「がん哲学外来」の活動について紹介している1冊です。
ポイント
がん哲学外来とは?
がん哲学外来はがん患者さんのさまざまな悩みを解消することを目的として設立された「一般社団法人がん哲学外来」です。
当初は順天堂医院内に開設され、30分~1時間ほどの時間を取ってがん患者さんと面談をし、悩みの緩和や解消などを行っていました。現在では全国約80カ所で活動が行われるまでに拡大。
そこでの主な活動は「メディカル・カフェ」と呼ばれる集いで、患者さんやその家族、医療従事者などが自分自身のことを話したり、来られた人たちの話を聞いたりして、がん治療を精神面からサポートしています。
がんになったとき大切なこと
がんになると怖さや不安などの悩みを抱えてしまい、がん患者さんの約3 割の人がうつ的な状態に。大きな悩みを抱えることで患者さんの生活は「がんを心配すること」が最優先になりがち。
がん哲学外来では、今までと同じ生活が続けられるよう、心配する時間を1日1時間とし、がんの生活上の優先順位を下げることが目標の1つとなっています。
優先順位を下げるためには、がんよりも没頭出来るものを探したり、今の自分に出来る役割を見つけたりすること。そのきっかけとなるのが、がん哲学外来のメディカル・カフェという場所なのです。
がん哲学外来は、がん患者会とどう違うの?
がん哲学外来のメディカル・カフェに近いものとして「がん患者会」があります。がん患者会はがん患者さん同士がお互いを励まし合いながら闘病することを目的にしています。
メディカル・カフェは、患者さん本人だけでなく、家族や医療従事者なども参加し、さまざまな悩みを解消することが目的。その1つに「人間関係で悩まない」ことも含まれています。
がんになると家族や周囲が患者さんにどのように接していいのか悩み、その反応に悩むがん患者さんも多いのが現状です。
そこでメディカル・カフェでは、主に家庭内でお互い今までと同じような関係でいられるようにするため、さまざまな人が集って、トレーニングを行う場としても活用されています。
【ヒトコト】
がんの怖さや不安といった悩みを減らしたり、解消したりして治療に臨む方が良い結果が出ているため、がん哲学外来は活動しています。
ネットで「がん哲学外来」と検索すると、どこで活動を行っているかが分かりますので、悩みのある人は参加してみてはいかがでしょうか?
田口 淳一 著、あきらめないがん治療ネットワーク 監修『名医に聞く あきらめないがん治療』
2019年04月25日 [ 書籍 ]
がんの治療には手術、抗がん剤治療、放射線治療の3つがあります。
これらの治療法で改善が見られないと、多くの病院では治療法がなくなり、手詰まりとなってしまうことも。
しかし、これら3つ以外にもさまざまな治療法が存在します。当書籍は、治療をあきらめない患者さんのために各種治療法を紹介している1冊です。
ポイント
免疫療法(樹状細胞ワクチン療法)
第四のがん治療法として注目されているのが免疫療法。がん患者さん本人の免疫細胞を取り出して人工的に増やし、再度、体内に戻すことで免疫力を増強、がんと闘う力を強化する治療法です。
免疫療法の特長は三大療法との併用が可能であること、抗がん剤と異なり身体的な負担が少ないこと、更には本人のがんを覚えさせてから体内に戻すため、免疫細胞ががんを発見しやすくなり、再発予防や転移した際にも効果が期待できることが挙げられます。
小さながんをも狙い撃つ「IMRT」
「IMRT(強度変調放射線治療)」とは放射線療法の1つですが、従来のものとは全く異なり、画期的な技術です。これが登場してから劇的に治療に変化が起こりました。
IMRTは、がんの凹凸に応じて十分な放射線照射ができ、大きながんだけでなく、小さながんの放射線治療成績も向上。更に正常組織まで放射線で損傷してしまうリスクを回避できるようになったのです。
また、最新の「SBRT(体幹部定位放射線治療)」では狭い範囲に短時間で集中して照射できるようになり、従来に比べ、より身体への負担が少なくなりました。
腹水を抜く「KM-CART」
お腹に水が溜まる「腹水」という症状が出ることがあります。腹水が何リットルも溜まると、胃腸や腎臓を圧迫し、食欲不振や腎機能の低下を招きます。それだけでなく腹水には免疫に関わるグロブリンという物質や、アルブミンというタンパク質などを大量に含んでおり、腹水を抜くということは免疫機能を急激に落とすことになってしまいます。
そのため現代のがん治療では、抗がん剤治療などを中止し、打つ手がなくなってしまうのです。
この状況を変えたのが「KM-CART」治療法。患者さんから腹水を抜いてろ過し、がん細胞や細菌などの不要な成分は除去した上で、タンパク質などの必要な成分だけを再び体内に戻す治療法です。
当書籍で紹介されている要町病院腹水治療センターでは、余命数日と宣告された終末期の患者さんが、「KM-CART」治療法によって、元気になって職場に復帰されたり、もう一度抗がん剤治療にチャレンジできるようになったりするのも珍しくないといいます。
腹水を抱えた患者さんにとっては新たな選択肢となる治療法です。
【ヒトコト】
がん治療を「あきらめない」ことをコンセプトにした当書籍は、がん患者さんの治療の選択肢を増やす一助となります。治療の選択肢を増やしたいと考えている方は読んでみることをお勧めします。
東口 高志『「がん」では死なない「がん患者」- 栄養障害が寿命を縮める』
2019年04月24日 [ 書籍 ]
がん患者さんのうち、がんによって亡くなるのは20%だけで、残り80%のがん患者さんは栄養不良が原因の感染症で亡くなっている事実をご存じでしたでしょうか?
当書籍では、医師である著者が栄養療法による実績と、がんと闘うためには栄養管理がいかに大事かを解説している1冊です。
ポイント
なぜがんになると痩せていくのか?
栄養学の観点からすると、がんは「代謝を異常にする」病気です。がんは糖の代謝を異常に進行させて、その糖を大量に取り込み増殖します。
また、筋肉を形成するタンパク質は肝臓で合成されますが、がん細胞は合成される量をはるかに上回って分解してしまうのです。
更に脂質も代謝異常を起こし、脂肪細胞から脂肪が血中に溶け出してしまうため、がん患者さんは筋肉が細り、体脂肪も減って、あっという間に痩せていくこととなります。
栄養障害の怖さ
入院中にも関わらず栄養障害が発生する原因は「栄養を入れるとがんが大きくなるため、栄養を入れない方がいい」という考え方が多くの病院にあるため。
しかし、著者の病院ではそのような患者さんの栄養管理をしっかりすることでQOLが改善、元気になっていると報告しており、がん治療での栄養管理の大切さが分かります。
実際、栄養障害になると傷の治りや回復が遅くなり、床ずれなどの原因になります。
更には筋肉が細くなることで歩けなくなってしまったり、起き上がれなくなってしまったりするのです。
他にも下痢や、腎臓のろ過機能、肝臓の代謝機能、脳機能の低下などが発生します。そして免疫力が低下することで、誤嚥性肺炎や敗血症などの感染症が発症し、がん患者さんの命の危険性を高めてしまうので注意が必要です。
抗がん剤、放射線治療の副作用を軽減する栄養素
抗がん剤により肝臓や腎臓は大きなダメージを受けます。このダメージを補うための基本栄養素がタンパク質とエネルギー源である脂質です。これに加え抗酸化作用のあるコエンザイムQ10やビタミンA、C、E、さらには亜鉛などをたくさん摂取することが大切です。
また抗がん剤の副作用で問題となるのが「味覚障害」。食べ物の味がしなくなることで、食欲が減退し栄養障害に陥りやすく、体調悪化の原因となります。
味覚障害は亜鉛や銅をはじめとするミネラルやビタミン全般、タンパク質などを補うことで改善されます。
放射線治療の副作用としては腸炎や肺線維症、貧血、脳の炎症などが挙げられます。
腸炎にはグルタミンや食物繊維、オリゴ糖が。肺線維症にはオメガ3系脂肪酸やコエンザイムQ10、BCAAが有効です。
貧血には鉄や亜鉛、銅が。脳の炎症にはBCAAやビタミンA、C、E、亜鉛が有効な栄養素として紹介されています。
【ヒトコト】
当書籍は従来の治療法とは異なる「栄養学」という観点でがん治療を解説しています。抗がん治療で体力が落ちてしまったり、副作用に悩まされてしまったりしている人たちにとっては、QOL向上の可能性がある1冊です。
鈴木 大介『脳が壊れた』
2019年04月23日 [ 書籍 ]
フリーのルポライターである著者が41歳で脳梗塞を発症。一命を取り留めるもいくつかの高次脳機能障害が残ってしまいました。
当書籍は著者が厳しいリハビリや重い後遺症に悩まされながらも、その闘病生活を時にはユーモアを交えながら赤裸々に報告している貴重な闘病記です。
ポイント
著者が脳梗塞になった原因
脳梗塞は、動脈硬化で狭くなった血管に血栓が詰まって発症する病気です。
著者が脳梗塞を発症したのは、もともと血圧が非常に高い状態だったことに加えて、取材記事を数多くこなすために睡眠時間を削りに削ったこと。
更には自分の意に沿わないことが起こると怒りを爆発させてしまっていたことなどの要因が重なったため。
乱れた生活習慣や高血圧だけでなく、カッとなる性格も更なる血圧上昇を引き起こす引き金となるので注意が必要です。
入院中のリハビリ
病院での処置後、早い社会復帰をするために行うのがリハビリです。その効果は発症直後に大きな回復を見せ、そこから徐々に穏やかになり、6カ月ほどでほぼ停止するといいます。そのため初動のリハビリがその後の回復度を決めるポイントに。
著者も左手がほとんど動かない状態の中、左手を握ったり、開いたりする訓練をし続けました。その訓練は消灯後の病室でも、眠くなるまで何時間も繰り返していたそうです。その甲斐あって脳からの神経伝達がちゃんと手に伝わり、少しずつ動くように。その後もさまざまなリハビリをしていきました。
中でもタイピングは6カ月間の厳しいトレーニングにより発症前と同じスピードで打てるまで回復したとのこと。
早い社会復帰を果たすためには、どんなにつらくても全てのリハビリを根気よくやり続けていくことが大切なのです。
退院後も残る後遺症と家族の支え
入院中にリハビリを行ったとしても、脳梗塞で死んでしまった脳細胞は残念ながら復活しません。
著者にも重度の後遺症が残り、自分の左側が見えなくなったり、左側への注意力を維持するのが難しくなったりしました。
また、物事の優先順位がつけられなくなることも。
感情面では叫びたいような、暴れだしたいような、猛烈な感情が襲ってき、それらの感情処理ができず、ただただ涙を流し続けることに。それでも著者は前向きに生活しています。
また家族も前向きにそれを支えています。この前向きな姿勢こそが重い後遺症を持ちながらも1 冊の書籍を書くまでの原動力になったのです。
【ヒトコト】
脳梗塞を含む脳血管疾患は死因第4位。多くの人に発症リスクがあるとともに、ご家族なども発症する可能性があります。
当書籍は、脳梗塞の具体的な後遺症を通じて発症の怖さを知ることが出来るとともに、万が一発症してしまったときの本人の心構えや、家族はどのように接することが大切なのかなどが分かる内容となっています。
奥田 昌子『健康診断 その「B判定」は見逃すと怖い』
2019年04月22日 [ 書籍 ]
健康診断の検査項目で「B判定(経過観察)」になった場合、その意味を「まだ大丈夫」や「セーフ」と解釈していませんか?実はB 判定こそが今後の健康を維持していくための大事なサイン。
当書籍ではB判定とはどのような意味か、放置するとどうなるのか、そして改善方法にはどのようなものがあるのかを解説しています。
ポイント
B 判定の意味は「アウト」
B判定の意味は「そのまま放置すると症状が更に悪化してしまうので、今のうちに改善してください」ということ。
ところが多くの人は危機感を持たず、そのまま放置することで生活習慣病になりやすくなります。
例えば血糖値でA判定の人が5年以内に糖尿病と診断されるのは200人に1人。ところがB判定の人で5年以内に糖尿病と診断されるのは4人に1人となり、A判定の50倍となります。
そのためB判定と診断されたら、その時点から生活習慣の改善をしていくことが大切なのです。
B 判定を放置してはいけない
B判定を放置すると3つの危険なケースがあります。
1つ目はB判定とB判定が重なる場合。このような人にはメタボリックシンドロームの傾向性があり、高血糖や高血圧、脂質異常症などが重なることで心筋梗塞や脳梗塞などを発症しやすくなります。
2つ目はB判定に+αの要素がある場合。このケースではB判定が1つでも、喫煙などの条件が加わることで動脈硬化などが進行する危険性が高まります。
3つ目はC判定以下だったものがB判定になった場合。改善が見られるとはいえ、まだ症状が進行している状態なので安心はできないということです。
B 判定をA 判定に改善する方法
B判定が出る大きな原因の1つは肥満です。肥満はコレステロールや血糖値、血圧などの数値を悪化させるため、A判定に戻すには日々の食事や運動がポイントになります。
まず肥満解消のために脂肪の摂取量を減らし、炭水化物を1/3カットして通常量に戻します。
コレステロールでは牛肉や豚肉の脂、バター、生クリームなど飽和脂肪酸を含む食品を避けて、サバやアジ、サンマなどの青魚に豊富なDHAやEPAといった不飽和脂肪酸を多く摂ること。
血糖値の改善では野菜、肉、魚などを先に食べてから、ご飯を食べるようにしましょう。
高血圧には「DASH食」という食事療法があり、一般的な食事よりも野菜や果物を多くしたり、魚を増やしたりします。加えて、乳製品を低脂肪にし、肉やお菓子を減らすことで全体的に低脂肪、低カロリーなものにしていきます。
運動では内臓脂肪を落とすだけでなく、血糖値や血圧を下げる働きがあるウォーキングやジョギング、サイクリング、水泳などの有酸素運動を1日30分以上行うと効果的です。
【ヒトコト】
当書籍に書かれている改善策は、B判定以外の人にとっても有効なものです。ぜひ生活習慣を見直して、健康な生活を長く送れるようにしていきましょう。
森 昭『歯はみがいてはいけない』
2019年04月21日 [ 書籍 ]
虫歯予防のために毎食後、すぐの歯磨きを習慣化している人も多いと思います。
この歯磨きでは、虫歯や歯周病予防はもとより歯や身体全身の健康を維持出来ないという驚きの事実と、「正しい」歯磨きを教えてくれる内容となっています。
ポイント
間違った歯磨きのポイント
食後、歯磨き剤を歯ブラシに大量につけてしっかりと歯磨きをする。実はこれが間違った歯磨き法の典型だったのです。
食後、口の中は酸性に傾くため、歯のカルシウムやリンが溶け出し、歯は少し柔らかくなります。食後すぐに歯磨きをすることは、歯磨き剤に含まれる研磨剤で歯のエナメル質を削っていっている行為。
本来、柔らかくなった歯を元の硬さに戻したり、食べかすを押し流したり、歯垢の増殖を抑えたりする役割を持っているのが「唾液」です。
ところが食後すぐの歯磨きでこの貴重な唾液も外に洗い流してしまうことに。歯磨きの目的は虫歯や歯周病予防のためですが、従来の方法ではしっかり機能していなかったのです。
歯垢を取ることは全身の健康に繋がる
口内細菌のかたまりである歯垢は増殖すると歯周病を発症。歯茎は炎症を起こし、そこから口内細菌が毛細血管に侵入します。
口内細菌は全身の血管壁に炎症を引き起こし血管にダメージを与えて、糖尿病や高血圧といった生活習慣病の原因の1つになるだけでなく、心筋梗塞や脳梗塞の引き金にもなります。
歯周病の人はそうでない人に比べ、心筋梗塞や脳梗塞の発症率が3 倍と非常に高いのが特徴。発症予防のためにも口内ケアが大切です。
また口内細菌は寝ている間に急激に増殖します。そのため起床直後に水を飲むと口内細菌が体内に侵入し、身体を壊す原因となりますので、起床後は歯磨きをしてから水を飲むようにしましょう。
正しい歯磨きのポイント
虫歯と歯周病予防のために著者は以下のような「正しい」歯磨き法を紹介しています。
歯磨きをするタイミングは起床直後と寝る前。その際、歯磨き剤は使用せず、歯の表面ではなく歯垢が溜まりやすい歯間を中心にケアするのがポイント。そのため歯ブラシよりもデンタルフロスや歯間ブラシを使うのがお勧めです。
殺菌作用のある唾液が歯間を通りやすくなることで、口全体に唾液が回りやすくなります。結果、歯間や歯茎に存在する歯垢の増殖を抑えて、虫歯や歯周病予防ができ、口内だけでなく身体全体の健康が保たれるのです。
加えて定期的に歯科医院に通って、日々の歯磨きで取りきれなかった歯垢と歯垢が硬くなった歯石を取ってもらうようにしましょう。
【ヒトコト】
食後すぐの歯磨きは歯を削るのと同じような状態になっているということと、「唾液」を活用するという考え方はとても驚きでした。
歯周病予防は全身の健康に直結していますので、デンタルフロスや歯間ブラシを使った歯間磨きに重点をおいた歯磨きをしてみるようにしましょう。
吉川 敏一『京都府立医大のがん「温熱・免疫療法」』
2019年04月20日 [ 書籍 ]
京都府立医大消化器内科では、以前より温熱療法と免疫療法の研究に取り組んできました。
温熱・免疫療法の特長は抗がん剤や放射線治療との併用で高い治療効果を出していることと、副作用がないことです。
当書籍は2つの治療法を具体的に紹介しています。
ポイント
温熱療法とは?
がん細胞は42.5℃ で死滅します。温熱療法は電磁波を使ってがんの病巣を42~43℃に加温し、ピンポイントでがん細胞だけを殺す治療法です。大きな温熱療法機のベッドに仰向けに寝た患者さんの患部を上下2枚の電極ではさみ、電極から電磁波が流れて患部を42℃ 以上に加熱。40分間寝ているだけで治療は完了します。
この治療法は下痢やおう吐、白血球の減少、脱毛など抗がん剤に見られる副作用がありません。加えて単にがん細胞を攻撃するだけでなく、血流を改善してより多くの抗がん剤をがん細胞に到達させるようにしたり、熱によって生まれた特殊なタンパクが抗がん剤の効果を高めたりします。
温熱療法は単体よりも抗がん剤治療や放射線治療などとの併用で高い効果を出すとのことです。
免疫療法とは?
抗がん剤治療や放射線治療、温熱療法と併せることで効果を上げるのが、患者さん自身の免疫細胞でがん細胞を攻撃する免疫療法です。免疫療法には2 つのタイプがあります。
1つは手術で摘出した患者さん自身のがん細胞をワクチンに加工して体内に注射し、自身の免疫にがん細胞を攻撃させる「自家がんワクチン療法」。
これはインフルエンザワクチンを打つと免疫がインフルエンザウイルスを攻撃するのと同じ仕組みです。
もう1つは血液から免疫細胞であるリンパ球を取り出し、がん細胞を攻撃できるよう活性化した上で増やして体内に戻す「免疫細胞療法」。患者さんの免疫は下がっていることが多いため、免疫が活性化する免疫療法が効果を上げるのです。
温熱・免疫療法の課題点
温熱・免疫療法には経済的な課題があります。
1つは病院側の負担。温熱療法は健康保険が適用されています。ところがこの健康保険制度の仕組み上、1人の患者さんに何回、温熱治療を行なっても病院側には同じ金額しか支払われません。
そのため治療回数が多ければ多いほど病院側がマイナスになってしまい、温熱療法が普及しない原因となっているのです。
もう1つは患者さんの負担。免疫療法は健康保険の適用がないため、すべて患者さんの自己負担となっており、1つの治療周期(クール)の費用は60~180万円とかなり高額。そのため、効果があったとしても免疫療法を病院側も勧めにくくなっています。
【ヒトコト】
身体を温めることで免疫力が高まり、がん細胞が不活性になることは以前から知られていました。大学病院としてこの考えを活用し、がんの標準治療と併せることで高い効果を上げていることは、課題があるにしても、今後のがん治療への光明となるのではないでしょうか。
日常生活でも意識して体温を上げ、免疫力を高めるようにしましょう。
石川 太朗『血圧の薬をやめたい人へ 降圧薬の真実』
2019年04月19日 [ 書籍 ]
高血圧のほとんどの人が飲んでいるお薬、降圧剤。高血圧と診断されたら生活習慣の改善だけでは治らず、降圧剤を一生飲み続けなければならないというイメージがあります。
実は降圧剤を飲み続けることでいろいろな問題が発生するのです。
1つは原因を改善しないため、薬の種類が増えていくこと。
もう1つは高齢者の血圧が下がり過ぎて起こる副作用です。
このような問題を回避し、血圧をしっかりと下げる食事療法や運動療法があります。
当書籍では薬剤師である著者が降圧剤の問題点や健康的な生活を取り戻すための具体的方法を解説しています。
ポイント
降圧剤の効果と問題点
世界の有力な医学雑誌(※1)の論文によると、降圧剤1 種類の平均的な降圧効果は上の血圧で-9.1mmHg、下の血圧では-5.5mmHgしか下がらないとのこと。2桁は下がりそうなイメージがありますが、実際は1桁しか下げる効果がありません。
その上、降圧剤には頭痛や耳鳴りなどの副作用が出るだけでなく、高齢者では低血圧になり過ぎてめまいやふらつき、心疾患、脳疾患、認知症などの発症リスクが出てきます。
降圧剤はやめられる
医学団体ガイドラインや医学雑誌の論文(※2)によると、高血圧の原因に対して減量や減塩など生活習慣の見直しをすることで、半分以上の人が降圧剤をやめられ、その後も服用しなくてよくなるとの事実が載っています。
生活習慣の見直しによる効果は何と降圧剤を2 種類使う以上の効果で上の血圧は-23mmHg、下の血圧は-13.5mmHgも下がるとのこと。
今まで生活習慣の改善だけでここまでの成果が出るとは思われておらず、驚きの結果です。
降圧剤をやめる実践法
当書籍のお勧め運動療法は、研究データの裏付けがある中国版ラジオ体操「八段綿」。1日30~40分、週5日程度行い、3カ月以上継続すると上の血圧が-13mmHg、下の血圧が-6.13mmHgも下がります。
具体的なやり方はYouTubeで「八段綿」と検索し、映像を参考にしてみてください。
食事療法ではDASH食(Dietary Approaches to Stop Hypertension食)という血圧を下げる食事法がお勧めです。
これは高血圧の原因である塩分を排出し、血圧を下げる効果のあるカリウム、マグネシウム、カルシウム、食物繊維、タンパク質などを多く摂り、お肉に多い飽和脂肪酸やコレステロールを減らした食事のこと。医学雑誌の論文(※3)では低塩分、中塩分、高塩分の食事を摂っている各グループにDASH食を用意。各グループの食事の一部をDASH食に置き換えて、血圧にどのような効果があるかを調査しました。
高塩分(1日約8.4g)の食事を摂っているグループではDASH 食を摂ることで上の血圧が-5.9mmHg、下の血圧が-2.9mmHg も低下。
この結果から、高塩分の食事を摂りながらでも効果が得られることが分かりました。ただし高血圧の治療はあくまで減塩が基本。塩分を摂り過ぎないようにしましょう。DASH食はインターネットでレシピを検索してみてください。
※1:「BritishMedicalJournal」誌
※2: 医学団体の日本高血圧学会が出している『高血圧治療ガイドライン2014』や「AmericanJournalofHypertension」誌
※3: 世界的権威の医学雑誌「TheNewEnglandJournalofMedicine」誌
【ヒトコト】
降圧剤を服用し続けるとさまざまなリスクが生じます。生活習慣の見直しだけで降圧剤を飲まなくて済むというのは、高血圧の患者さんにとっては福音です。
具体的な運動法や食事法の詳細も分かりやすく解説されていますので、高血圧の方もそうでない方にも健康のためにおススメです。
梶本 修身『すべての疲労は脳が原因』
2019年04月18日 [ 書籍 ]
仕事や運動などで「身体が疲れている」と感じたことはありませんか? 実は身体以上に疲れていたのは「脳」だったのです。今回紹介する書籍では疲労とは何か、疲労の原因とそれを解消するためにはどのようなことに気をつければいいのかなどが解説されています。
ポイント
最も疲れていたのは脳だった
仕事や運動など身体を動かすと「身体」が疲れると思われていますが、実は身体以上に疲れていたのは「脳」だったのです。
脳は運動強度や体調に応じて、24時間休むことなく身体が求めることを計算し、あらゆる器官や組織に指令を出し続けています。運動時には全身への指示を処理し続ける脳への負担が特に大きくなり、脳が最も疲れるのです。
脳の疲労を軽減することで身体の疲労も軽減されます。疲労回復には脳の疲労を取ることが大切。放置し続けると身体が休まらず健康にとって悪影響を及ぼすので注意が必要です。
いびきも疲労の原因に
睡眠を取っているにも関わらず疲労が取れないということはありませんか?その原因は睡眠中の「いびき」です。
人はいびきをかいていると気道が狭くなり、肺に空気を入れるためにかなりエネルギーを消費します。加えて十分な酸素量を吸うことが出来なくなることで、酸素供給量を維持しようとするため脳は自律神経に命令して心拍を速め、血圧を上げるのです。
結果、脳は休むべき睡眠中も自律神経を酷使して休むことが出来ず、疲労が取れないと感じるのです。
脳を休め疲労回復をするために
脳の疲労回復をするためには「良質な」睡眠を取ることがポイント。そのためには「睡眠前にパソコンやスマホなどから発するブルーライトなどの強い照明を浴びないようにする」「ぬるま湯の半身浴で副交感神経を優位にし、脳内の自律神経を休息させる」「食事で疲労を取っていく」の3つが挙げられます。
抗疲労に最も効果があるとされているのが「イミダゾールジペプチド」(以下、イミダペプチド)という鶏の胸肉に含まれている成分。鶏の胸肉100gには200mgのイミダペプチドが含まれており、これを最低2週間ほど摂り続けると効果が現れるとのことです。
また、いびきの改善について著者は医療機器のCPAP(シーパップ)と呼ばれる「持続陽圧呼吸療法」を推奨しています。これは睡眠時、鼻に空気を送り込む機械を着用することで劇的にいびきが改善し、良質な睡眠が取れるというもの。健康保険適用の場合、月々4,700円ほどで使用出来ます。
【ヒトコト】
疲労のほとんどは脳が感じていること、そして疲労が取れないのは脳が休むべきときに休んでいないことが原因でした。疲労回復をして健康でいるためは良質の睡眠を取ることがいかに大切かが分かる1冊です。
上野 直人『一流患者と三流患者―医者から最高の医療を引き出す心得』
2019年04月17日 [ 書籍 ]
当書籍では「がん」と診断されたとき、医師としっかりとコミュニケーションを取ることがより良い治療を受けるためのポイントと説いています。
著者はアメリカの有名ながん病院の教授であり、自らもがんを克服した医師。その経験からより良い治療を受けるために必要な姿勢や考え方、質問方法、情報収集の仕方などを解説しています。
ポイント
一流患者、二流患者、三流患者の定義
タイトルにもなっている言葉を著者は次のように定義しています。
一流患者とは、医師の話を理解するため自らも勉強し、一緒に考え、納得して治療の選択をする患者のこと。
二流患者とは、自ら勉強することを放棄し、医師にすべてお任せの患者のこと。
三流患者とは、医師のことを信じられず、常に文句ばかり言う患者のこと。
日本とアメリカのがん患者の大きな違いは医師に対しての積極的な質問の姿勢にあると言います。
質問と確認が大切
著者によるとがんは誤診が多い病気とのこと。誤診によるダメージを防ぐだけでなく、より良いがん治療を受けるためにも次のようなことが大切です。
1.受診の基本は必ず医師の話をメモすることです。分からないことがあったらその都度、質問をするようにしましょう。
2.最初にがんと診断されたときにはその根拠を質問し、誤診でないかを必ず確認するようにしましょう。
3.自分でも病気を詳しく調べるため、一般名とは別に医学的な正式名称を医師に教えてもらうようにしましょう。
当書籍では具体的な質問の仕方や確認ポイントなども解説されていますので参考にしてみてください。
自分で病気を調べるコツ
著者は医師からの説明を鵜呑みにするのではなく、自らも病気を詳しく調べるためインターネットによる情報収集を勧めています。
基本となるのは学術論文を調べるための「GoogleScholar」と、医師がよく使うアメリカの「PubMed」という医療情報検索サイト。両方とも医学的な正式名称で調べることがポイントです。
精度が高い情報は英語が多いため、本当に必要な情報を得るためには英語にチャレンジしてみることも勧めています。
他にも厚生労働省の「健康・医療」ページや、国立がんセンターの「がん情報サービス」ページ、全国がん〈成人病〉センター協議会の「全がん協生存率調査」ページなども役立つとのことですので確認してみてください。
実は著者はがんと宣告されたとき動揺し、一流患者として行動できなかったと反省しています。
がん専門医である著者でも動揺するのです。誰もが心理的に冷静ではいられないのは当然のこと。そのため当書籍を参考に少しでも実践をして、より良い治療を受けられるようにしていきましょう。
川嶋 朗『心もからだも「冷え」が万病のもと』
2019年04月16日 [ 書籍 ]
身体が冷えると健康にどのような影響があるのかご存じでしょうか?
今回紹介する書籍は大学教授であり、冷えの専門家でもある著者が「冷え」の怖さやその解決策を分かりやすく解説している1冊です。
ポイント
身体が冷えていませんか?
「冷え」とはさまざまな原因から血流が悪化して体温が下がり、「低体温」になってしまった状態のことです。ご自分の身体が冷えているのかを簡易的に確認する方法があります。
朝、起きた直後にまず脇の下に手のひらを挟み込み、次にその手をおへその下に置いてみましょう。もし脇の下よりもお腹の方が冷たいと感じたら身体が冷えています。他にもチェックリストがありますので、確認してみることをお勧めします。
冷えの原因とは?
身体が冷えてしまう原因は、冷たいものの摂りすぎや夏場の冷房による冷やし過ぎ、運動不足、ストレス、医薬品の飲み過ぎなど。
本来、人体は冷たい刺激を受けると体温を維持するために呼吸数を増やしたり、心拍数を増やしたりして熱の産生を高めます。ところが慢性的に冷える状況下にいることで、身体は冷たい刺激に鈍感になります。
結果、体温を維持するための熱の産生をしなくなってしまい低体温になってしまうのです。
冷えが原因の体調不良
身体が冷えることによって血流が悪化します。その結果、頭痛や肩こり、生理痛、生理不順、高血圧、糖代謝の不調などの症状が出やすくなります。
また、臓器の機能も低下し、便秘や関節痛になったり、人体の約60%の免疫細胞が集まっている腸内の免疫機能も下がって、ガンを発症しやすい傾向になったりするのです。
冷えの解消法
冷えによる体調不良を治すためには、身体を温めることが大切です。湯たんぽや温かいペットボトル、使い捨てカイロで冷えているところや大きな血管が集まっている太ももなどを温めたり、お風呂に入って身体全体を温めたりしましょう。他にも腹巻をしたり、歩いて筋力をつけたり、腹式呼吸で身体をリラックスさせることも効果的です。
食事では身体を温める効果のあるものを積極的に摂るようにしましょう。著者は玄米や小豆、根菜、海藻、鱈などの食材を勧めています。
また、漢方に詳しい医師の診察・処方を受けて「葛根湯(かっこんとう)」、「人参湯(にんじんとう)」、「八味地黄丸(はちみじおうがん)」や「桂枝加苓朮附湯(けいしかりょうじゅつぶとう)」など用途に合わせて身体を温める漢方薬を使うことも効果的です。
他にはストレスを減らすことも大切なポイントとなります。
現代の生活環境には身体が冷えやすい要因が多くあります。当書籍のタイトルにもあるように身体が冷えると体調を崩し深刻な病気を引き起こしたりしますので、たかが「冷え」と思わず、健康のためにも日々意識して身体を温めるようにしましょう。